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まさかわたしがかかるとは

彼らは的確に私の弱点をついてきました。

流石が我々の大先輩。


こう見えても私は、相当ガードは硬い方だと自信を持っていました。

公共交通機関は殆ど使いませんし、外での飲食は勿論しません。

どっかに出かけるときは梅干し入りおにぎりを車に積み車で移動します。

非科学的おしめなどと揶揄されても、外出時には不織布マスクは欠かさず着用し、

マスクご遠慮ドレスコードのような場に出くわしても、決して外したままそこで佇むようなことはありませんでした。

思えばマスク着用は東京電力福島第一原子量発電所の事故直後からでした。

夏の暑い日の集会でも、「今日は風が強く放射能を含んだ土が再降下するから、お子さんにマスクつけてやってください。」とお節介おじさん役を買って出たりし、

世の中からマスクが消えた時期でさえ、我が家は在庫が豊富に残っていました。

マスクだけではありません。

免疫力を高めるためにランニングを続け、緑茶をよく呑み、梅干しを毎日食べてきました。

それなのに、それなのに‥。

彼らは私の弱点を一気に突き破ってしまったのです。

一体いつ?どこで?誰から?と振り返っても思い当たる節がありません。


私の弱点は喉です。

小さい頃から風邪をひくと真っ先に扁桃腺を腫らしていました。

大声で歌を歌ったりすると、翌日は決まって声を枯らします。

彼らはそんな私の喉めがけピンポイントで侵入しじわじわと扁桃腺を攻撃してきたのです。

おりしも、父の3回忌の法事で帰郷しているときでした。

完璧に段取りしていた法事でしたが、取りやめ改めて催すことにしました。

いまだ全くこの先の見通しがはついていません。

大変高価な薬のおかげで38℃以上上がった感染熱は2、3日の間に引けました。

しかしながら、喉の痛みだけは一週間たった今でも尚続いています。


最初は唾を飲み込むことも、痰を吐き出しことも、水を飲むことも喉が痛くてできませんでした。

薬の摂取は尚更困難を極めました。

水と一緒だと、飲み込む瞬間に咽せて吐き出してしまいます。

私が心の中で”赤い爆弾”と呟く抗ウイルス薬は非常に粒がゴツく一回につき4粒も投与が必要です。

そればかりではありません。そのほかにも錠剤、カプセル、粉薬とたくさんの種類が処方されています。

この喉で薬を飲むだけでそれは大仕事なのです。それだけでお腹いっぱいになります。

中でも、漢方の扁桃腺の痛みを和らげるオレンジ色の顆粒薬にはとことん苦しめられました。

喉に触れると和らげる効能なのですが、この腫れた喉では和らげるどころか爪で引っ掻かれているように痛みを感じるのです。皮を剥がされ塩水を浴びせられた因幡の白兎が如くのたうち回るしかありません。

良からぬ想像が頭をよぎります。このまま薬も飲めず、何も食べれなくなって死んでしまうのか‥。

数も種類もこの地球上で最も多く長い歴史を持つ生命体が、地球で最も不健全で邪魔でしか無い生命体を成敗する歴史の一コマにすぎない‥。

父の最期も誤嚥だったし、そのように導かれているのかも‥。


私がそれでも薬の苦行をこなせたのは”とろみ調整剤”のおかげです。

水と一緒に薬を放り込むとすぐに咽せるので、水と薬ととろみ調整剤を入れ葛湯というより水団子状態にして少しづつ押し込むように連続して何とか飲み込むことができたのです。

その方法にしても、僅かなひとかたまりを狭まった喉に通過させるのは涙が出るほど痛いのですが‥。




もし不幸にも罹患され同様に喉が痛くて薬も飲めない方は是非”とろみちゃん”を試してみてください。

聞くに今回の感染症の特徴は主に喉の痛みだそうです。

私だけでは無いようですので。



私は閉じた空間の中で未だ喉の痛みを抱えながらこの文章を打ち込んでいます。

ちゃんと文章になっているのかも甚だ疑わしい状態です。

もう、後遺症も始まっているのかもしれません。

ただ、予防に勝る治療は無いと今更ながら核心だけは得ることができました。

今にして思うと、自分では万全と思いつつもどっかに油断があったのだと思います。

何か世の中の雰囲気に惑わされ、以前に比べ予防を徹底しなくなってきていたのは確かです。

鼻うがい、手洗い、まめな消毒もほとんど忘れていました。


唯一幸いなのは、超濃厚接触者であるつれは今のところ陰性なことです。

つれの感染対策は私に比べれば完璧です。

イベルメクチンも早めに飲んでいました。

何で俺だけ感染したんだろ?と階下にいるつれにメールすると、

「甘い!君は想像力が無さすぎる。」

と一言返信がかえってきました。


つれに感謝する日々です。





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