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イチジクと子蜂のこと


3年ほど前、アトリエの机上でポチの頭部を作っていた時、目の前のタブレット端末に映し出された動画に目を奪われました。

天然のイチジクの実(実は花序)のてっぺんから懸命に中に入り込もうとする1匹のコバチ(小蜂)の動画です。

動画は生命科学者の中村桂子さんが編纂したもので、イチジクとイチジクコバチの不思議な関係について克明に解説していました。

最初はこの世の出来事と思えないほどの美しい光景だとただ漠然と入り込んでいたのですが、其れが何故なのか自分でも全くわからなかったのです。


この二つの属種の関係に興味を持ち其れなりに学習した結果、イチジク属と膜翅目イチジクコバチ科の関係が、人間と他の生きもの同士では全く成立していないことがわかりました。


イチジクは雄木と雌木があり、花は花序(私たちが果実と言っている)の中に閉じ込められています。雌木は雄木からイチジクコバチという蜂が花粉を運ぶことで受粉し、種子をつくるのです。つまり、イチジクコバチがいないとイチジクは子孫が残せません。また、イチジクコバチもイチジク雌木の実に卵を産むので、イチジクなしでは子孫が残せないのです。

この二つの種の複雑な関係の中でも特記すべきことは、700種以上も存在する野生のイチジク属1種に対して、受粉を助け、自らも生殖できるイチジクコバチの種も其々たった1種しかないという事なのです。

即ち、イチジクとコバチは一対一対応で、相手のイチジク無くしてはコバチは死に絶えてしまうし、その固有種コバチが居なかったらイチジクも又絶滅してしまう。お互いにあなたがいなければ生きていけないという命懸けの結びつきなのです。


果たして、私たち人間にその様なパートナーは存在するでしょうか?


もしかして、地球上の生きもの達全てが本来、人間にとってお互いにあなたがいなくては生きていけない存在なのかもしれせん。其れを忘れ、まるでピラミッド構造の最上部から他の生きもの達を支配するがごとく一方通行の振る舞いを続ければ 、人類の破滅の日もどんどん近くまで押し寄せてくる事でしょう。

私たち人間がこれまで何とか生きて来れたのも、この小さな星で暮らす様々な生きもの達に支えられてきたからです。私たち一人一人がこれまでの人間中心主義を捨て、彼等と共に生かされてきたことの意味を考えれば、例えば戦争や環境問題、原発、食糧危機や感染症に至るまで、今日先が見えないと思われている様々な問題も自ずや解決の糸口が見えてくると思います。


其のことを少しでも作品を通じて表したいのですが、何分知恵も乏しく力不足なのが残念です。

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