最後のデッサン
- 正彦 日下
- 5月22日
- 読了時間: 1分

呼吸は一分間に60回をとおに上回っていました。そのポチがどうしても立ち上がりたいと脚をバタバタさせているのです。
私はひとつの覚悟を決め、ポチを抱き抱え屋外に出ました。
ポチは私に支えられながらやっと4本の脚で土の上に立ち、少し腰をかがめ長い放尿をしました。
放尿を見届け再び抱き抱えた後、彼は私の腕の中で呼吸を止めました。
まさに決死の覚悟で自分が生きた証をシーツの上ではなく、大地に刻み込んだのです。
素晴らしい最期でした。
私のうわっつらだけのデッサンなどポチのおしっこに比べたら到底かないません。
そんな情けない思いを抱えながら、最後のデッサンを描きました。



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